4cm-4cm

Metal/Rust|金属/錆

Image | イメージ

Material | 素材

金属/錆(rust)

概要

水に溶けない鉄や鉄合金の腐食生成物。 一般的には、金属の腐食生成物を「錆」と呼ぶが専門的には、鉄や鉄合金の腐食生成物のみを「錆」「鉄錆」と呼び、それ以外の金属では錆とは呼ばずに単に腐食生成物と呼ぶ。 高炉で鉄鉱石にエネルギーを与えると、炭素は鉄鉱石を鉄に還元する。こうして「鉄」が産み出される。放置しておくと、やがて鉄は酸化してエネルギーを失って、酸化鉄に復って行く。つまり、錆は、還元された鉄が酸化して安定な状態へとかえろうとする過程に生じる結果である。 錆は、酸化還元反応により鉄表面が電子を失ってイオン化し、鉄表面から脱落して行くことで進行する。電気化学的な反応なので、錆が発生するかどうかは電位と pH に依存する。生じたイオンは酸素により鉄酸化物(酸化鉄)、または水により含水酸化物(水酸化鉄やオキシ水酸化鉄)に変化して鉄表面に堆積する。ゆえに、酸素や水があるところに鉄を放置すると、錆を生じる。錆は自身が水分や汚れを留め、また、鉄鋼表面に凹凸が出来て反応面積が増大するため、一旦生じた錆は加速度的に進行する。 河川や海洋構造物のうち、最も錆びやすい部位は、大気と水が同時に存在する水面の部分である。

「赤錆」と呼ばれる鉄錆は、水の存在下での鉄の自然酸化によって生じる。通常の赤錆には下地の保護作用はなく、腐食はいつまでも進行する。一方、緻密な酸化物被膜ができれば、腐食に対する保護層として機能する。たとえば鉄を濃硝酸に浸すとその強力な酸化力によって表面には緻密な 酸化鉄(III) 層が生じ、腐食速度が低い 不動態と呼ばれる状態になる。不動態皮膜による防護作用を積極的に利用した鉄鋼として耐候性鋼がある。耐候性鋼は一般的な鉄鋼とは違い、無塗装で使える。ステンレスも基本的に同じである。 一方、「黒錆」は主に 四酸化三鉄 からなる。水の存在下で上記のような反応で形成される黒錆層には保護効果は期待できないが、高温、酸素不十分の条件で鉄表面に人工的に形成した黒錆層は不動態層同様に緻密な皮膜となるため、防食法の一つとして有用である。 塩化物イオン (Cl−) により、鉄の不動態皮膜は孔食と呼ばれる局部腐食作用を受ける。これによって錆が激しく進行し、やがては貫通してしまう

錆を誘発するもの

海水

海水は Cl− を含んでいる。海塩粒子は風で運ばれることがあるため、海に近い所では内陸部と比べて、鉄鋼の腐食速度が大きい。海岸部では耐候性鋼も無塗装では使えない。

体液

汗や血液、尿などの体液もCl−を含むため、鉄鋼に錆を誘発する。このため、剥き出しの鉄鋼には極力素手で触らないこと、また、これらの体液が触れる用途では使用後によく手入れして取り除いてやることが重要である。

融雪剤

寒冷地では路面凍結を防ぐために、融雪剤を道路に散布する。融雪剤としては主に塩化カルシウム CaCl2 が使われる。塩化カルシウムに含まれる Cl- により自動車が錆びることがある。 近年の自動車は1980年代以前と比べて技術進歩により防錆処理がしっかりしたため、錆があまり目立たなくなった。

ことわざ

身から出た錆

自分の行為が原因で、結果として自分が苦しむこと。語源は、刀の手入れを怠って、刀が錆びてしまったことから。「身」とは、刀の刀身を意味している。

褐鉄鉱(かってっこう、limonite)

鉄の酸化鉱物の通称。別名はリモナイト。天然の錆である。

緑青(ろくしょう、Patina)

銅が酸化されることで生成する青緑色の錆である。銅合金の着色に使用されたり、銅板の表面に皮膜を作り内部の腐食を防ぐ効果や抗菌力がある。湿った条件下で酸素、二酸化炭素および水分が銅と反応することにより生成する結晶性の錆である。 銅製の食器類や、十円硬貨(青銅製)によく発生することで知られる。

<用途>

緑青は、銅合金の着色に欠かせない素材となっている。銅葺屋根や銅像においては、むしろ緑青独特の色を美術的にも効果的に取り入れている。古代から銅の鉱石および顔料として利用されてきた孔雀石は、天然の塩基性炭酸銅を成分とする。 緑青は、酸素の触れる表面にのみ発生し、比較的脆いため落とすことが出来る上、緑青が金属の表面に発生すると皮膜が生じ不動態となり、内部の腐食を防ぐ効果がある。ブロンズ像は、緑青の皮膜のお陰で長期間原型を留めることを可能としている。 多くの建築物では、銅管が給水設備に使われており、緑青が内部で発生する事があるが、銅管の腐食の進行を防ぐ効果がある。シンクや浴槽などに緑青の様なものが付く場合があるが、大抵は石鹸かすや人間の垢と銅イオンが反応した結果である。特殊な水質で無い限り、銅管から緑青が溶け出したり、緑青のせいで水が青色になることは無い。

鎌倉大仏、自由の女神像

近年まで日本では、緑青に毒性があると考えられていたが、特筆すべき毒性は実際はない 。これは金属製錬技術が未発達な時代に、銅の中に鉱石由来の多量のヒ素などが混入していたため、ヒ素中毒などに由来するのではないかとされている 。

酸化鉄の用途

いくつかの酸化物は陶器やセラミック用素材として広く利用される。釉薬にも使用され、多くの金属酸化物と同様、高温で焼結させることで釉薬を発色させる。鉄を含む釉薬の特徴として、焼成時に酸化的雰囲気だったか還元的雰囲気であったかで発色が異なるという点が挙げられる。 酸化鉄は顔料としても利用され、日本ではしばしば弁柄という呼び名で用いられる。天然の酸化鉄の顔料は黄土(オーカー、Ochre)と呼ばれることがあり、他にも、生や焼いたシェンナやアンバーのような多くの古典的な顔料が存在する。このような顔料はラスコー洞窟の壁画など早期先史時代の芸術に使われて以来、利用され続けていて、酸化鉄(III)が主成分である。 鉄顔料は化粧品の分野にも広く利用されており、非毒性で耐湿性を持ち退色しないと理解されている。化粧品に使用される等級の酸化鉄顔料は原料の酸化鉄(II)、酸化鉄(III)の原末を含まないように合成的に製造される。そして酸化鉄顔料には天然由来の不純物か含まれることは普通のことである。通常、酸化鉄(II)系の顔料は黒色で、酸化鉄(III)系の顔料は赤色ないしは錆色である(酸化物以外の鉄の化合物はほかの色を示す)。 (黒色酸化物と呼ばれる)マグネタイトは鉄製工具の被覆(黒染)に利用される [6]。この処理により金属腐食が防止され、感じの良い外見が与えられる。MIO(micaceous iron oxide) と呼ばれる等級のヘマタイトは(多くの橋やエッフェル塔など)防錆塗料に利用される。 酸化鉄は核磁気共鳴画像法のコントラスト造影剤としても利用され、プロトンの緩和時間(w:en:Relaxation (NMR);T1, T2 そして T2*)を短縮化させる。超常磁性コントラスト造影剤は、マグネタイト (Fe3O4)ないしはマグヘマタイト(γ-Fe2O3)の、水に不要な結晶性の磁性体核から構成され、磁性体核の直径は4から10ナノメートルである。この結晶核はデキストランや澱粉の誘導体で覆われていることが多く、それも含めて粒子サイズは水和した粒子の直径を超える。USPIO(UltrasmallSuperparamagnetic Iron Oxide)ナノ粒子の場合は、核はひとつずつ内包され、水和した粒子の直径は50ナノメートル以下である。


※このページは編集中です。